講演者
植村八潮 教授(専修大学教授/出版デジタル機構会長)
講演日時
2013年5月23日(木) 14:45~16:15
講演場所
創想館2階 セミナールーム3 (14-203)
講演概要
 2010年の電子書籍ブーム以来,「電子書籍」という言葉が一般化して,今では特別の注釈なく用いられている。これまで読書とは紙の本を読むことを意味してきたが,携帯電話やパソコンで小説を読むことも読書と呼ぶように,修正が迫られている。読書家、愛書家にとって、このような時代に抵抗を感じるところでもあるが,長い間品切れになっていた本が、電子書籍として復刊されたりするなど,電子ならではのメリットもある。市場創出という点からも新たな出版の世界に期待が集まっている。  しかし,文字情報の電子化は,なにも21世紀になって始まったことではない。70年代には自然科学系データベースが開発され,80年代にはCD-ROMの登場により「電子出版」が注目されるなど,すでに40年以上の歴史がある。90年代に急速に普及した学術電子ジャーナルは,印刷学術誌に置き換わって主流となり,電子辞書やウェブ百科事典,地図情報などのリファレンス系コンテンツは,電子情報との親和性が高く,印刷書籍以上の利便性を提供して成功している。  では,長い間,印刷書籍が果たしてきた役割は,電子に完全に置き換わるのだろうか。「いつでもどこでも入手できる」という利便性は提供するものの,感動や理解がディスプレイだから深まるとは考えられない。むしろ「眼光紙背に徹する」という言葉が意味するように,本を深く読み学ぶという行為は,文字どおり紙面だからこそ成立しているのではないだろうか。  そもそも本を読むための専用端末の商品化は,今になって始まったことではない。1990年のソニー「電子ブック」や1993年のNEC「デジタルブック」以来,すでに20年以上にわたって取り組みまれてきた。むしろ最近になるまで,読者に見向きもされなかったのである。利便性にも勝る読書の習慣性とは何なのだろうか。  印刷書籍と電子書籍を比較した上で,本の未来について考えてみたい。    ********************     ご講演資料はここにあります。 電子書籍2013_慶應足立研0523配布
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