足立研セミナー: 確率制約条件つきモデル予測制御と応用
- 講演者
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小野 雅裕 助教(慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科)
- 講演日時
- 2012年4月10日(火) 16:30~18:00
- 講演場所
- 創想館 セミナールーム3 (14-203)
- 講演概要
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本講演では chance-constrained model-predictive control (CCMPC, 確率制約条件つきモデル予測制御)の分野における二つの重要な問題に対する解法を提示する。CCMPC とは、非有界で確率的な外乱の存在下で、状態制約(state constraints)を満たせないリスクを、与えられた確率以下に抑制するモデル予測制御の技術である。
第一に、多エージェント問題における分散有限ホライズン最適制御(finite-horizon optimal control)問題を考える。エージェント同士が chance constraint を介して干渉していることが、この問題を解く上での課題である。我々はこの問題に対し、双対分解(dual decomposition)に基づいた Market-based Iterative Risk Allocation(MIRA)というアルゴリズムを開発した。本アルゴリズムにおいて、各エージェントはそれぞれ、与えられた双対変数(dual variable)に対して自身の制御入力を分散的に最適化する。一方、双対変数(dual variable)は市場(central module)が求根問題を解くことによって最適化される。MIRA は計算が分散化されているにもかなわらず、集中的な最適化と全く同じ解が得られることを保障する。この手法は、tatonnement あるいは Walrasian auction とよばれる、競争経済における資源分配の仕組みにたとえられる。つまり、双対変数(dual variable)をリスクの価格と見立て、各エージェントは与えられたリスク価格において最適化計算を行いリスクへの需要を求める一方、市場(central module)は価格を調整することで、リスクの総需要と供給を一致させる。均衡価格において最適なリスク分配が達成される。
第二に、非有界外乱を受ける動的システムの、MPC による制御の問題を考える。ロバストモデル予測制御(RMPC)においては、resolvability(または recursive feasibility)はモデル予測制御器の安定性を論じる上で重要な性質であった。Resolvability とは、もし現在において制御器が feasible な解を見つけられる場合、未来においても必ず feasible な解を見つけることができるという性質である。しかし、外乱が非有界である場合、一般に resolvability を保証することは不可能である。そこで我々は probabilistic resolvability という新たな概念を提唱する。Probabilistic resolvability とは、もし現在において制御器が feasible な解を見つけられる場合、向こう N ステップの未来においてある確率で feasible な解を見つけることができるという性質である。我々は新たな CCMPC アルゴリズムを提案し、それが probabilistically resolvable であることを示す。
最後に、これらのアルゴリズムの、航空宇宙およびスマートグリッドの問題への応用について触れる。
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