今回の非線形フィルタリングに関するワークショップの主要テーマの一つはUKF(Unscented Kalman Filter)であり, UKFの提案者であるSimon Julier (University College London) もワークショップに参加していた。
UKFの拡張に関する発表もあったが,UKFを特徴づける「シグマポイント」を用いたSPKF (Sigma Point Kalman Filter) という名称を使おうと,この講演者は主張していた。この講演の質疑応答のとき,会場から「なぜ‘’unscented”という名がついたのか」という質問が,会場にいたJulier に向けられた。
Julier がUKF を提案したのは1990年代半ばであったが,当初は”new filter”と呼んでいたこと,その後,この名称ではちょっとおかしいので,新しい名称を,当時彼が所属していたオックスフォード大学のロボットグループで投票の結果,決めたことなどを,Julier が説明した。Julier の話が長くなりそうだったので,司会者から「話は短くしてね」というような注意があり,会場からは笑いが聞こえたが,みなUKFの命名についてJulier自身の説明を聞きたかったようだ。
私は3年前ケンブリッジに滞在していたときに,初めてUKFを知ったが,”unscented”という単語の意味がピンとこなかった。”Unscented”とは「まじりっけなし」というような意味であるのだが,カルマンフィルタの考え方をできるだけ近似を少なく計算するという意味をこめて”unscented”という単語を用いていると解釈して,「無香料」と翻訳した。すなわち,UKFを「無香料カルマンフィルタ」と訳したのだが,どうやらあまり適切な訳ではなかったようで,定着しそうにない。
実体により近い名称として,UKF ではなく,SPKF が定着していくかも知れない。