宇都宮大学足立研 OB の佐野 久さんからオハイオ通信 [4] が届きました。
佐野さんは宇都宮大学足立研の学位取得第1号で(1996 年に社会人ドクターコースで博士(工学)取得),現在は Honda R&D Americas の Division Director として Research のまとめ役をされています。
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足立先生の「ケンブリッジだより」と比べて,筆不精であることをお許し願いたい。 4回目の投稿に当たる今回はゴルフに焦点を当てよう。
私は3年半前にアメリカのオハイオ州に転勤した。こちらに来て私はゴルフを始めた。50歳を過ぎたにもかかわらず,である。日本にいるときは,会社の上司,友人からゴルフを誘われてもずっと断り続けていた。今回のオハイオ通信では,私のゴルフ嫌いを治してくれたアメリカのゴルフ環境を紹介したい。
まず,なぜゴルフをやる気がしなかったかまとめよう。
まだサラリーマンになった若いころ,サラリーマンの必修科目としてゴルフは必要と思っていた。 球技は決して得意ではなかったが,ゴルフを始めようと思い練習場に何回か通った。 しかし,なかなか球にうまく当たらない。当たっても思ったように飛ばない。何が楽しいのだろう。 また,当時は今以上にコースでのプレー代が高かった。 さらにプレーするとなると,早朝から出かけて夜戻ることになる。 丸一日かけて高いプレー代を払って,さらにボールがうまく飛ばないストレスを感じることを考えると,ゴルフをする気にならなかった。
アメリカに赴任したとき,前任者から歴代の所属長が受け継いできたゴルフコンペの責任者を引き継ぐこと,という申し送りがあった。 前任者は私がゴルフをやらないことを知っていたので,ゴルフ道具まで用意されていた。 “No” という答えは許されず強制であった。 もうこうなったら腹をくくるしかない。 50 歳からゴルフを始めよう,と決意。
そして最初のデビュー戦を迎える。
ゴルフ場に行くと,まず驚いたことは料金が安い。 このコースは $30。1ドル90円と仮定すると 2700 円(他のコースも $20~45 が相場)。 さらに日本のような昼食休憩がなく,1番ホールから18番ホールまで連続でプレーする。 したがって,9時に開始すると午後1時には終了。半日は別のことに使える。 またカートに乗らずに歩いてプレーも OK である。 コース長が 6600 ヤードの場合だと,ボールがあちこち飛ぶから,実際の歩行距離は約 10 キロ弱。 スロープレーを避けるために小走りするからとても良い運動になる。 ジョギングが趣味の私としては新たな発見であった。 スコアは 147。参加者からは最初はそんなものです,と慰められる。 しかし,スコアとは別に,ゴルフがとても良い有酸素運動であるとともに,景観が美しいので良い気分転換になることがわかった。 これは大きな収穫であった。以降,すべてのコンペに参加することにした。
1年経過してからは,実践で練習するため自分一人でラウンドを始めた。 多くのゴルフ場が予約無しで行っても快く受け入れてくれる。 混んでいるときはアメリカ人の2人や3人のグループに混ぜてもらってプレーするのだが,これも楽しい。 ゴルフ用語含めた英語の勉強にもなる。 また,初めて会った人たちと楽しくプレーできるのがゴルフの良い点であることを実感する。
私が現場で学んだゴルフ英語をいくつか紹介しよう。
まずはティーグランド上のティーショット。 ドライバーがうまく当たって飛ぶと,われわれ日本人はナイスショットと言うが,アメリカ人は Good ball と言ってほめる。 グリーンをねらったショットで,グリーンに乗ってくれと願うとき,日本人が届け,乗れ,という表現 Get up there(there の発音はゼアではなくネアと聞こえる)。 グリーンに乗ったかどうか聞かれる表現は Get on there? と語尾が上がる。 アプローチショットでミスショットし,グリーンを勢いよく転がるボールに対して,止まれ,と叫ぶ表現は,Sit down。 座れ,と同じ表現であることに共感する。また単に Sit,Stay とも言う。 アメリカ人も結構大きな声で言う。皆気持ちは同じである。 パターでカップにボールが入ったときは,Nice putt。 この発音がナイスパーと聞こえる。Putt の “t” の発音が聞こえないのである。 Par(パー)ではなくボギーであっても、カップに入れば Nice putt(ナイスパ)と言われる。 アメリカ人は嫌みで言っているわけではない。Par と Putt の発音を良く聞き分けなければいけない。
年一回のゴルフ観戦も楽しい。
私が住んでいる Dublin という町には毎年6月に行われるメモリアルトーナメントで有名な Muirfield Village Golf Club がある。 日本人のゴルフ好きの人は皆知っているコースだという。 ゴルフを始めるまで私は知らなかった。さすがにここは会員制のゴルフクラブなので,一般のわれわれはプレーできない。 しかしトーナメントの観戦券は比較的容易に入手できるので,有名なプレーヤーを目の前で見ることができる。 プロだから当たり前といわれるかもしれないが,いずれのプレーヤーも,ショットの飛距離・正確性は本当に感動ものである。
昨年のトーナメントではタイガーウッズ,石川遼を間近で観戦することができた。
ゴルフに詳しい仲間の駐在員によれば,日本のトーナメントでは石川遼などプロ選手を間近で見ることは混雑と警備により非常に難しいという。 ここ Muirfield では本当に目の前でプレーを見ることができる。 遠く日本を離れたアメリカという土地で日本人選手が活躍している様子を見るのはとてもうれしい。 われわれもともにがんばらねば,という気持ちになる。
タイガーウッズのことにも触れておこう。
彼の人気はプライベートな件でいろいろ世間を騒がせたにもかかわらず,他のアメリカ人プロ選手と比較して別格である。 タイガーが一球打つたびに歓声が上がり,その大きさは他の選手たちと比べ物にならない。 アメリカ人プロがグリーンを狙うショット,アプローチ,パターのとき,観客はこうして応援する。 打つまでは皆静粛にしているが,打ち終わるやいなや,Get in the hole! と言う。 Tiger が打つと Get in the hole という応援の声がすごい。 さらにこれが本当にカップに入ったときは,Tiger, Tiger, Tiger …. という声が鳴り止まない。 タイガーウッズの人気は今も健在であることを実感した。
最後にゴルフのメリットをまとめよう。
日米共通のメリット
① 見知らぬ人とすぐに仲良くなれること
② 気分転換になること
アメリカ固有のメリット
③ ウォーキングの効果
④ 拘束時間が短いこと
⑤ 予約しなくても気軽に出来ること
⑥ 料金が安いこと
私にゴルフの楽しさを教えてくれたアメリカのゴルフ環境に感謝したい。
足立研の皆さんもアメリカに行く機会があれば,ぜひゴルフプレーを検討下さい。貸しクラブもあります。
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佐野さんが書かれているように,海外で活躍している日本人選手を現地で見ると,本当に感動します。私が英国にいた2003年にはウィンブルドンで杉山愛がダブルスで優勝しました。プレミアリーグには稲本がいました。また,ヨーロッパの夏に盛んに行われる陸上競技では,短距離の朝原もがんばっていました。研究者(技術者)も国内だけではなく,世界を舞台に活躍しましょう! 【足立記】