下館和巳教授(東北学院大学,シェイクスピアカンパニー主宰)の3月2日付けの主宰ブログ 「真実は偶然を媒介として現象する」 を転載させていただきます。
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真実は偶然を媒介として現象する (2014.3.2 )
下館和巳
これは、『新ロミオとジュリエット』の中で、またぎ(ロレンス神父)が露未緒(ロミオ)に言う原作にはないセリフだ。いつどこからこのセリフが生まれたのだろう?と考えてみた。というのは、間さえはずさなければ、このセリフに確実に観客が笑ったからだ。カンパニーのセリフの中では群を抜いて哲学的でわかりにくいセリフなのにである。それに、これだけは東北弁ではなかった。
備忘録をたどる。2012年6月23日「ダンテ『神曲』を読む会」で、読書会のメンバーの方が教えてくれたとある。なぜ教えてくれたのか?「地獄篇」を読みながら、10年前に暮らしていたケンブリッジ以来のおつきあいをさせていただいている慶應大学理工学部の足立教授との談話のことを、みなさんにお話したからである。
備忘録は、ぼんやりとした記憶を照らす明かりになる。6月1日に!!!マークが三つ・・・なんだろう?あっ、これは、私の備忘録が足立教授の備忘録に嫉妬した証拠である。物理情報工学科大学院の足立ゼミで講演をさせていただいた後に、確か私は自分の備忘録の自慢をした。すると、足立教授がさり気なく「実は私も・・・」と見せてくれたのは、私の備忘録など宇宙の果てに吹っ飛んでしまうような量の情報がびっしりと書き込まれた足立備忘録だった。私は、そのことの詳細を自分の備忘録の気持ちを察して、記してはいない。ビックリマークだけだ。(そう言えば、あれから、私はあまり備忘録の自慢をしなくなったような気がする。)ともかくその後に、秘書の方(見事な飲みっぷりの!)と若い助教の方を交えた四人で乾杯をした。いい気持ちになってきた頃、私は「気づき」の話をし始めた。「気づくのには時間がかかるのだけれども、ジワっとではなくある瞬間にハッと気づくんですよね」と言うと、元湘南ボーイ足立教授の可愛い瞳がキラリと輝いて、こう語ったのだ。「そうなんです(ジョッキを指して)ビールがグラス8分になってもダメ、いっぱいでもダメ、この縁からこぼれた瞬間に、初めて気づくんです」。
目のウロコが、もしコンタクトレンズのようなものであれば、その時目から外れてひらひらと私の手元のビールの泡の上に落ちた。
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【足立追記】
(1) なぜ私がコンピュータなどの電子機器を使わず,備忘録(ノート)を使うのか?
電子機器は進化途上であり,成熟していないからです。
自分の部屋にいれば,20年前の出来事を私のノートから即座に見つけることができますが,20年前の文書ファイルを記録媒体から見つけることは私には不可能です。8インチフロッピー,5インチ,2.5インチ,MD,ハードディスク,CD, DVD, USBメモリ,… など目まぐるしく変わる記録媒体に追従することは大変困難です。
「一生ものの万年筆をもとう!」 といういい方はありますが,「一生もののパソコン」 は残念ながらありません。パソコンや携帯端末の寿命はせいぜい数年でしょう。一生モノのパソコンができたとき,ようやく技術が文化になります。
(2) 頭のよい(記憶力のある)人は,ノートなど必要なく,すべて頭の中に記憶することができるのでしょうが,私にはそんな能力もなく,頭も経年劣化しているので,書いておくことはとても重要だと考えています。
(3) ノートに書くという作業には,日々の膨大な出来事(ビックデータ)を数行程度に情報圧縮するという,知的な行為が含まれています。私の研究にもつながってきますが,その作業が非常に楽しく,重要だと思っています。
(4) ビールのジョッキについて
本当に頭のよい(記憶力がよいのではなく,賢い)人は,たぶん問題に応じて,ビールのジョッキの容量とか,ビールを注ぐスピードを制御できるのだと思います。
(5) 下館先生の備忘録について
下館先生の字は味がある芸術的なもので,備忘録の紙面を見ているだけで楽しくなります。これは私にはまねのできない素晴らしいことです。
コメント
足立修一 先生
ケンブリッジ会の宇野@明治経営でございます。
ブログの追記に全く同感でございます。日頃、電子辞書や電子書籍には、拙著などを通して異を唱えてきておりますが、先生はもっと解りやすく述べておられます。とても参考になります。
ところで、JAXAの川口淳一郎君は高校の同級生で、貴学文学部教授小倉孝誠君は中学からの同級生でございます。
目下、下館先生を編集主幹に据えて、『木下順二に捧げるシェイクスピア(仮)』を企画中でございます。
月末にお目に掛かれます事を楽しみに致しております。
宇野毅 拝
2014年03月05日 7:05 PM | 宇野 毅
宇野先生
お久しぶりです。宇野先生が足立研ブログをご覧になっていることに驚きました。
下館脚本の「主宰ブログ」の中にプレーヤーとして一度は登場したいと思っていたので,今回の「真実は偶然を媒介として現象する」は非常にうれしく思っています。
またお会いできる機会を楽しみにしています。
足立
2014年03月05日 8:33 PM | Shuichi Adachi
なつかし~いですね。今、あの時間に戻りたいという激しい郷愁に襲われています。紅茶にパラソル、緑の芝生、陰影のある風景・・・なんと優雅な午後だったのでしょう。しかし、足立教授と私が、一瞬、あの頃ケンブリッジのタイレストランや道でよく出会ったホーキング博士のように、車椅子に乗せられて涎を垂らしているように見えた(笑)のは、私だけでしょうか?
そうでしたね、容量!足立教授のまさにご専門の制御!思い出してきましたよ~細かく。
2014年03月05日 8:01 PM | 下館和巳
下館先生
今回の主宰ブログ「真実は偶然を媒介として現象する」,本当にありがとうございました。
10年前の写真を探して,足立研ブログに掲載しました。
ケンブリッジでご一緒したのはほんの数か月だったのですが,よく会っていましたね。
贅沢な時間でした。
もう1枚の建物の写真は,Gonville and Caius college です。昨夏,足立研M2学生と一緒に Caius college に滞在したときの写真です。そのとき,この場所でホーキング博士と偶然すれ違いました。さすがの私も写真を撮ることを忘れていました。
足立
2014年03月05日 8:41 PM | Shuichi Adachi
慶應義塾大学
足立修一先生
大変お世話になっておりますシェイクスピア・カンパニーの浅見でございます。毎回毎回情報をすぐにUPして頂き誠にありがとうございます。
足立先生の追記は、全くその通りでございます。個人的な意見ですが、「本当に頭のよい(賢い)人は、人間としての器(容量)も大きい」も含まれると思っております。
足立先生・宇野先生・下館先生(アイウエオ順)を拝見して、そう思います。(足立先生に3月の東京公演でお目にかかれるのを非常に楽しみにしております)
宇野先生、昨年12月の多賀城リハーサル公演にお越し頂きありがとうございました。
浅見典彦
2014年03月06日 9:12 AM | 浅見典彦