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今年は自動車以外の分野でも,バッテリ電動ビークル BEV:Battery EV が登場した。一つは沖縄石垣島の電気推進観光船 Seaborne BEV である。駆動やバッテリに,電気自動車の部品を流用して製造された。もう一つは,JR 東日本のバッテリを電源とする電車 Rail-borne BEV である。
JR 東日本の EV-E301 は,今までディーゼル車が走っていた架線のない区間を走行する電車である。東北本線宇都宮・宝積寺間と,烏山線で運用を開始した。2両編成で運転され,将来は同線の気動車をすべて置き換える計画となっている。
EV-E301 形は,集電と充電兼用のシングルアーム式コレクタ(くの字型パンタグラフ)を2基搭載している。架線区間では走行しながら通常充電し,烏山駅と宝積寺駅では停車中に急速充電する。急速充電に対応するためにコレクタのすり板を強化し,両駅では電流容量の大きな剛体の架線が張られている。
架線からの直流 1,500 V を DC-DC コンバータで 630 V に降圧し,インバータで三相交流に変換して 95kW かご型誘導モータを駆動する。DC-DC コンバータとインバータの間に、630V-95kWh のリチウムイオン電池が接続され,2両編成当たりの蓄電容量は 190kWh となる。非電化区間ではこの蓄電池を電源として走行する。制動システムは,回生ブレーキ併用電制空気ブレーキである。
JR 東日本の関係者に架線レス化の将来性を聞いたところ,ディーゼルの置き換えは進むが,山手線などのバッテリ駆動は当面は無理だろうとのこと。都市交通では世界的に路面電車が注目されているものの,景観問題から架線レス化が急務である。したがって,次は Street-borne EV の出番だと言う。
情報通信などの電子工学を弱電 light current engineering と言い,電力系統の電気工学を強電 heavy current engineering と呼ぶ。EV はこの中間領域のエンジニアリングなので,中電 middle current engineering と言える。これから陸海空の移動体分野で,バッテリ駆動化が同期して進みそうなので,中電分野での技術革新が面白くなりそうである。