「制御工学の基礎」の第7章のコラムです。
【7章のコラム】 制御と宇宙工学
宇宙工学研究の発端のひとつに,ドイツが第二次世界大戦中に開発した V2 ロケットがある。この開発の指揮をとっていたのがフォン・ブラウンであり,彼は世界大戦後,米国に渡り,米国のロケット開発に携わった。
一方,当時の二大強国であったソ連は,ツィオルコフスキーという偉大な宇宙工学研究者のおかげで,1957年10月4日,彼の生誕100周年の年に,人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した。さらに,1961年4月12日に宇宙飛行士ガガーリンがボストーク1号に乗り,人類初の宇宙飛行に成功した。
それまで一方的にソ連に後れをとっていた米国は,その1ヵ月後の5月27日,当時のケネディ大統領が議会で,「1960年代の終わりまでには,人類を月に着陸させ,安全に地球に帰還される」という有名な演説をする。1958年に設立されたアメリカ航空宇宙局 (NASA) は,ケネディの演説を受けて,マーキュリー計画,ジェミニ計画,そしてアポロ計画を実行する。そして,1969年7月20日,アポロ11号によってアームストロングとオルドリンが月面に降り立った。
宇宙工学は,空気力学,構造,エンジン,制御,通信,電子などさまざまな工学が複雑に関係した分野であり,調和のとれたシステム設計を行う必要があり,「システム工学」という新しい工学を誕生させた。その中で,制御工学も誘導制御技術,軌道推定などで貢献した。また,カルマンによって提案されたカルマンフィルタは,ジェット推進研究所(JPL)などで研究され,マリーナ10号の自動パイロット装置に採用された。
# スペースシャトル(左)と ETS-VI(右)(1994~95年にこの人工衛星を使って軌道上同定・制御実験を行わさせていただきました)