宇都宮大学足立研 OB の佐野 久さん(Senior Chief Engineer of Honda R&D Americas)からオハイオ通信 [9] が届きました。
6月のオハイオは夏真っ盛り。
オハイオ通信[2]で書いたように、冬の寒さが非常に厳しいので、オハイオ州民(Ohioanと呼ぶ)は、この季節を待ってましたとばかり、アウトドアを楽しむ。そして、主要な農業作物であるコーンと大豆は、今すくすく育っている。
今回のオハイオ通信では、オハイオの気候や農業を日本と比較して眺めてみよう。コロンバスは、ケッペンの気候区分を見るとCfa(温暖湿潤気候)とDfa(冷帯湿潤気候)の境界に当たる(図1)。冬の寒さが北海道並みに厳しいので、感覚的には北海道と同様のDfaがしっくりくる。アメリカ大陸には南北を遮るような山脈はなく、極めて平地である。
したがって、冬は北極で冷やされたカナダからの寒気団がいとも簡単に南下してくる。この寒気団に覆われると厳しい寒さになる(図2)。図からOhioは寒いが、カリフォルニアやフロリダは冬でも暖かいことがわかる。アメリカ人の友人の中には、すでにフロリダに別荘を持っている人もいる。リタイヤしたら、フロリダへ引っ越すのだと言う。
一方、夏は南からの高温気団が、これまたいとも簡単に北上してくるので、かなり暑くなる(図3)。雷雨も多く、雷雲の規模が大きいと、トルネード(竜巻)が発生する。しかし、湿気は日本ほど多くないため、蒸し暑さは感じず、とても過ごしやすい。久しぶりに夏の日本に行くと、成田空港に着くやいなや、蒸し暑さのためどっと汗が出てしまう。
次に農業を見てみよう。
高校の地理で、アメリカの農業は大規模経営と機械化農業が特色であると習ったことを覚えている。まさにその通りである。ここオハイオは地平線が見えるほど平坦で(図4)、作付面積がとにかく広大である。この農地に大型トラクターで種まきをし(図5)、収穫をする。アメリカ人の友人によれば、GPSを使ったトラクターの無人制御も普及していると言う。
日本と比較すると、単位面積当たりの収穫量は少ないが、面積が広大なので、一人当たりの収穫量は圧倒的に多いと思われる。成長したコーンと大豆の写真を図6,7に示す。日本の農産物とアメリカのそれとが真っ向勝負すると、価格ではかなうわけがないと思った。日本の農業は、ぜひ高い品質を売りにして競争に勝ち残ってもらいたい。
最後にお米について触れておこう。
アメリカの米は意外においしい。カリフォルニア米をいろいろ試した中では、田牧米(たまきまい)Goldというブランドのコシヒカリが一番おいしい。いずれのブランドも炊きたてはおいしいのであるが、少し冷めるとごはんが固くなることが問題であった。その点、田牧米は時間が経過しても固くならない。
赴任当初、会社のカフェテリアでアメリカメニューの昼食をとっていたが、数年経過すると、さすがにいやになった。やはり日本食が食べたい。
単身赴任なので、弁当男子になることを決断、毎日お米の弁当を持参するようになった。凝ったおかずこそ作らないが、これに即席みそ汁を付ければ、電子レンジでごはんは熱々、コーヒー用にお湯があるから熱いみそ汁が飲める。一汁二菜、今ではアメリカのオフィスで幸せな昼食タイムを過ごしている。