カルマン教授(Prof Rudolf Emil Kalman)が7月2日の朝(アメリカ東部時間)に逝去されたとのニュースを聞きました。86歳でした。
システム科学,制御理論の父であり,私は個人的に20世紀のシステム科学を代表する3名の科学者は,シャノン,ウィナー,カルマンだと思っています。
私個人も拙著「カルマンフィルタの基礎」を通して,間接的に大変お世話になりました。10年前の2006年9月にケンブリッジでお話しさせていただいたことがあります。下はそのときの写真です。
今年の9月にはケンブリッジでワークショップがあり,そこにカルマン教授も参加されるという話を聞いたばかりでした。非常に残念です。
謹んでカルマン教授のご冥福をお祈りいたします。
なお,稲盛財団の京都賞のwebページにこのニュースが書かれています。
1985年に第一回京都賞をカルマン教授が受賞されたときの記念講演「システム理論とは何か」を読み返してみました。30年前(私が博士課程3年生のとき)の講演ですが,いま読んでも新鮮な内容です。制御を含むシステム理論を志す若い研究者にはぜひ読んでいただきたい文章です。
モデリングの極意を説明するときに,私はアインシュタインの言葉
「科学の説明はできるかぎり単純でなくてはならないが、単純化しすぎてはならない」
を好んで引用しますが,カルマンもこの講演の中でこの言葉を引用していました。結局,私(をはじめ多くの制御工学者)はカルマンの掌の中で動いているのに過ぎないのだなと改めて思いました。