精神衛生上,positive な書評のみを受け入れることにしている。
昨年10月に出版した 「カルマンフィルタの基礎」 (足立・丸田著) の書評(カスタマーレビュー)が先日 amazon にアップされた。私の知り合いが私のために書いてくれたような非常に好意的な書評であり,しかも書かれていることが私が思っていることを代弁してくれていたので,その一部を抜粋させていただく。
*********** amazon 書評より ***********
「~ ど素人向けに言葉であれこれ書かれた 書籍はあるけど、基本そのような書物からは本質的なことを得ることは難しい。読者に適度な数学力を求めている点でも好感が持てる。~」
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最近は,「わかりやすく説明する」ことが重要であると,よく言われる。確かに難しくしゃべるよりは,わかりやすく説明してくれたほうがよく,間違ったことではない。しかし,これが度を超すと,簡単にわかることしか理解できず,深く考えなければいけないようなことや,理解することに時間(手間)がかかることがどんどん敬遠されていってしまう。我が国の理科系の世界でこの傾向が強くなっていることに,私は危機感をもっている。
たとえば,われわれの専門分野である「制御工学」では,直感的に物事を理解することだけではなく,数式の変形,その原理などを手計算を通して確認することが重要な作業であり,このプロセスを経験しない表面的な理解では,本当に役に立つ制御理論を習得したとは言えない。
「カルマンフィルタの基礎」では,難解だといわれることが多いカルマンフィルタのアルゴリズムを,自分自身の手計算で確認してもらうことを期待した。この書評を書いてくれた人にこの点を評価していただき,とてもうれしく思う。
わかりやすく説明することは重要であるが,難解な理論を理解できるためには,受け手のほうの努力も必要であること,すなわち,情報を発信する側と受信する側の歩み寄りがあったときに,はじめて「わかりやすい説明」だとお互いに感じることができるのではないだろうか?