別のところに書いた雑文を掲載します。
—————– 黒板とチョーク(2016.07.19) ————————–
私は大学の教員をしていますが,大学の授業はスライド(パワポ)を使わずに基本的に板書にこだわっています。
(難解な)教科書に書いてあることの要点をまとめたものがスライド資料であり,そのスライド資料を作る段階でかなりの量の知的な作業を行っています。本来,その作業を行うのは学生であり,教員ではないのです。なぜならば,複雑なデータの中から本質的な情報を取り出すことは,学習の重要なプロセスだからです。
スライド授業に慣れ切った学生は,最初から箇条書きされた重要な情報のみを提示されるので,なぜそれが重要なものなのかというところまで,考える学生が少数でしょう。これでは考える力が衰えていきます。
では,学会発表などではなぜスライドを使うのでしょうか?
それは15分とか20分とかいった限られた時間内で講演内容すべてを理解してもらうことは無理だと諦めているからです。学会発表の目的は,発表内容に興味を持ってもらうきっかけを作ることだと思います。
大学の授業では,1時間半の一コマの中で,その日に講義した内容についてはきちんと理解して帰ってもらいたいと私は考えているので,クラシックな講義スタイルですが黒板に向かってチョークを走らせます。
いま一番気になっていることは,愛用しているチョークが製造中止になり,その在庫がもうすぐなくなることです。