宇都宮大学足立研 OB の佐野 久さん(Senior Chief Engineer of Honda R&D Americas)からオハイオ通信 [10] が届きました。
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日本で放映している NHK の「サラメシ」は、ここアメリカでも NHK 系列のテレビジャパンと契約することで見ることができる。
英語の題目は “Lunch On” (昼食に~を食べる)という。中井貴一の軽快な語り口で紹介される働く人たちのランチを見るのが楽しい。
オハイオ通信 [9] の中で、筆者が弁当男子であることを述べた。そこで、第10回のオハイオ通信では筆者の弁当を紹介する。
まず、なぜ弁当男子になろうと決意したのか説明しよう。筆者のオフィスには大きな Cafeteria があり、アメリカ人好みの様々なメニューが用意されている。日本人駐在員向けに和食メニューも必ず一品ある。単身赴任した当初はありがたく食べていたが、メニューのローテーションが限られていること、味付けが濃いこと、いわゆる「お袋のお総菜」的なメニューがないことから、どうしても飽きてしまう。
また昼食時は混雑のため順番待ちが生じるし、空きテーブルを見つけるのも一苦労する。ならば自分で食べたいと思う弁当をつくって、自分の机でインターネットのニュースを読みながら食べるか、と弁当男子になることを決意。オフィス内には Kitchenette と呼ばれる簡易キッチンがあちこちに設置されていて、冷蔵庫、コーヒーサーバー、給水器、給湯器、電子レンジが用意されている。炊きたてご飯を冷凍して持ってくれば、電子レンジで解凍して熱々のご飯がいただける。また、即席みそ汁と給湯器で、熱々のみそ汁が飲める。
筆者が和食を食べることができるのは、日本食スーパー「天助マーケット」(http://tensukemarket.com/)のおかげである(図1:天助マーケット)。日本と比べて価格が割高である点は否めないが、コロンバスという日本直行便がないアメリカの地方都市で、和食の食材が得られるというメリットは大きい。ちなみにアメリカ人は Tensuke をテンスキーと発音する。
日本にいたときは、料理は妻に任せっぱなしで、自分で料理はほとんどしなかった。単身赴任のおかげで必要に駆られて料理をするようになり、今では自分が食べたいと思う料理は何でもつくれるようになった。平日は忙しいので、一週間分の弁当の仕込みは、日曜日の夕食の準備とともにワインを飲みながら行っている。実は同じメニューが五日間続くのだが、意外に飽きない。
自分が好きなメニューだけをつくっていること、ふりかけやみそ汁の種類を毎日変えることが飽きない理由であると考察している。
さて、では弁当のベスト5を紹介しよう。基本は一汁二菜である。
1. 豚肉のしょうが焼き(図2)
ばら肉と肩ロースを半分ずつ使い、隠し味にトマトケチャップを入れてつくる。これは神保町にあるキッチングランのレシピから学んだ。こうすると本当に定食屋さんのしょうが焼き定食の味になって、ご飯が進む。もう一品は、こんにゃくを炒って醤油と唐辛子で味付けた炒りこんにゃくである。
2. 肉じゃが (図3)
かつおの削り節から自分で出しをとってつくる。出しの一手間を加えるだけで肉じゃががとてもおいしくなる。アメリカのスーパーでも、日本よりやや厚いが、薄切り牛肉を売っている。もう一品は昆布の煮物。
3. 塩鮭 (図4)
アメリカのサーモンはおいしい。一切れが日本より大きいのが特徴。塩または塩麹に一晩漬けるだけで日本の味になることを、ゴルフ仲間の駐在員の奥様から教えていただいた。もう二品は、ひじきの煮物と夕べのラタトゥイユの残り。
4. ハンバーグ(図5)
牛挽肉と豚挽肉 2:1 が黄金比である。こうするとお袋の味のハンバーグになる。中濃ソースとケチャップをあえてハンバーグの上にかけている。もう一品は昆布の煮物。
5. とんかつ(図6)
アメリカの豚肉はおいしい。もう一品は切り干し大根。
こうして改めて自分がつくるメニューを見ると、定食屋さんのメニューが多いことがわかる。弁当づくりを継続できるのは、日曜日の夕食仕込み時に、ワインを飲みながら面倒くさいと思わない範囲で気楽につくっているからだと思う。
最後に日本の即席みそ汁や即席スープの品質がとても高いことを付け加えておく。なかでも永谷園のあさげ、松茸のお吸い物はアメリカでは本当にありがたい存在である。
足立研の学生の皆さん、海外駐在は家族帯同がベストですが、皆さんが年齢を重ねて、諸事情で単身赴任になったとき、料理ができると楽しく駐在生活が過ごせることを保証します。