元号が令和に改元されて最初の足立研セミナー「知能と人工知能のはざま」を,鎌倉駅前の井上蒲鉾店3階「茶寮 いの上」で開きました。

講演者は4名で,うち2名にはじっくりと,他の2名には短時間でお話ししていただきました。昆虫(ムカデ)からロボット/人間,自動車から宇宙まで多岐に渡る対象について「知能」という切り口でお話ししていただきました。

普段は慶大の矢上キャンパスで開いている足立研セミナーですが,初めて場所を古都鎌倉に移して開催しました。会場の都合もあり,今回は聴衆を30名に限定して,非公開にしました。参加した30名の内訳も,足立研関係者,廣田さんの大学時代の同級生/お知り合い,自動車業界の人,出版関係の編集者などなどバラエティに富んでいました。共通して言えることは知的好奇心の高い方ばかりだったということでしょう。

最初の2件のご発表は1時間20分ずつ,お昼ご飯を挟んで,じっくりとお話ししていただきました。

  • 廣田幸嗣氏(元日産/カルソニックカンセイ):開発者の視点から見た「自動運転と人工知能の課題」
  • 大須賀公一教授(大阪大学):ロボットって? ~知能はどこから生まれるのか?
  • 企画,現地担当,ご講演をしていただいた廣田さん,いろいろありがとうございました。素敵な場所,素晴らしい参加者,そして,示唆に富んだトーク,大変参考になりました。

    大須賀さんには,ビデオや写真などを駆使して楽しいお話を聞かせていただき,ありがとうございました。大須賀さんのお話しは何度も伺っているのですが,そのたびに新しい発見があり,もはや「古典落語」の域に達しています。

    昼食のときには,参加された30名の方に自己紹介をしていただきました。

    因果関係を解説する Explainable AI (XAI)のところで触れられた,「因果」の間に「縁」があり「因縁果」(仏教の法話)であるという廣田さんのお話,非常に興味深かったです。原因(input)と結果(output)という入出力関係だけを見ている現在の機械学習(AI)の危うさと,原因と結果の間に「縁」(私は勝手にこれを「状態」だと考えました)を導入したカルマンの現代制御の世界観が対照的だなと感じました。

    また,「物」に「心」が交わりて「事」になる(南方熊楠,1893)という大須賀さんのお話しも印象的でした。

    最後に,2件のショートプレゼンテーションをしていただきました。

  • 安川清一氏(元安川電機):現在のAI(人工知能)から次々世代のAB(人工頭脳)へ AI/AB 5.0
  • 山崎直子氏(宇宙飛行士):ISSでの活動と宇宙でのロボティクス応用
  • 本当は私もお話ししたかったのですが,あっという間の5時間で,私の出番は不要でした。

    足立研セミナーを「知のディズニーランドですね」と評してくれた方がいましたが,まさに鎌倉でのセミナーはその通りでした。これは大須賀先生のお話しに登場した「環境との相互作用」であり,このような「場」があり,議論をすることによって初めて知能が発現するのだと思います。

    今後もいろいろな形で足立研セミナーを開催していきたいと思っていますので,興味のある方はどうかご期待ください。